120314
たまにはアルゼンチン映画の話

Astor Piazzolla - Duo de Amor

DVDを受け取ってから、ずいぶん日数が経ちましたが
映画「タンゴ ガルデルの亡命」を、やっと観ました。
最初の数分だけを観て、ブエノス・アイレスらしき街、
と紹介しましたが、どうやら早合点だったようです。

ブエノス・アイレスから亡命してフランス・パリに逃れた人たち、
という設定であり、全編がフランスでの撮影なのでしょう。
アルゼンチンは確か、南米のパリと呼ばれるそうですから
どこか似た印象があるのかもしれません。

個人的には、スペイン語とフランス語がまぜこぜに
出てきたので、二種類の好きな言語を聴けたのは
とてもラッキーでした。
音楽はもちろん、ピアソラでなくてはいけなくて、
冒頭の曲は、最初のシーンだけでなく、途中にも
使われていて、テーマ曲のような感じです。

アンドリュー・ロイド=ウェバーが作曲した
同じくアルゼンチンの軍事政権をテーマとする
ミュージカル「エヴィータ」とは時代的にずれており
直接的な関連はないようです。

内容に関しては、ピアソラの音楽、出演者の演技、
ふんだんに踊られるタンゴ・・・どれも高水準です。
ストーリーと流れに関しては、日本人にはちょっと
理解しにくい部分が多々あるように思います。
それと、製作手法が、私にとっては前衛的な部分があり
それが作品のリアリティーを減衰させていて、
人工的な作り物であることを随所で実感しました。

ですが、ピアソラとタンゴとフランス語が好きな、
ちょうど私のような人間には、楽しめる作品です

映画を鑑賞する上で予備知識としての背景説明を
映画オタクらしい方のブログでみつけましたので
ご紹介します。

ブログ「逸楽の映画選@リピートマニア」より

タンゴ ガルデルの亡命
原題:El Exilio De Gardel TANGOS

1985年 / フランス=アルゼンチン
監督  フェルナンド・E・ソラナス
脚本  フェルナンド・E・ソラナス
音楽  アストル・ピアソラ、ホセ・ルイス・カスティニェラ・デ・ディオス
出演  マリー・ラフォレ、フィリップ・レオタール、
                ミゲル・アンヘル・ソラ他

舞台こそパリになっているものの、
ソラナス監督がアルゼンチン人であり、かつ、
アルゼンチンが生んだ天才音楽家アストル・ピアソラの
最高傑作との呼び声も高い「タンゴ・ゼロ・アワー」
ともリンクしているので、アルゼンチン度という点では
本作に軍配が上がります。

1970年代にアルゼンチンで発足した軍事政権は、
徹底的な言論弾圧等を行ったため、政府による
強制誘拐・殺人等により生じた行方不明者は
数万人を下らないと言われています。
この間、多くの知識人たちは、難を逃れるため
海外に亡命しました。本作がパリで撮影されているのも、
ソラナス監督自身がそういった亡命者の一人であった
ことによるものであり、また内容についても
軍事政権を逃れてパリに亡命してきた人々が
祖国の現状と郷愁を訴えるタンゴの舞台を
作るというものになっています。

以下、本作を鑑賞するために最低限必要な情報を記しておきます。

① タンゲディアとは?
タンゴはただのダンスではありません。
喜び哀しみ怒りといった人間の様々な感情を
表現できる手段のひとつです。そしてタンゲディアとは
造語で、「タンゴによる悲喜劇」といったニュアンスの言葉です。

② ガルデルとは?
20世紀初頭に実在したアルゼンチン史上に残る
名タンゴ歌手です(日本でいうと美空ひばりみたいなもの?)。
国外に亡命こそしていませんが、世界中を公演で飛び回り、
若くして飛行機事故で亡くなっています。
日本でもCDが出ていますので気に入った人は
買ってみるのも一興でしょう。

③ サン・マルティン将軍とは?
アルゼンチン国内では、欧州からの植民地解放のために戦って
独立を勝ち取ったラテンアメリカの伝説的英雄として
評価されているそうです。もっとも、
欧州生まれのアルゼンチン人であり、ラテンアメリカ各国が
独立を勝ち取リ終わる前に理想と現実のギャップに
失望を感じて欧州に帰ってしまったので、
アルゼンチン以外ではあまり評価されていない模様。
映画で語られているとおり、最後はフランスで客死しました。

④ エンリケ・サントス・ディセポロとは?
20世紀前半のタンゴ界をリードしたスターで、
特に作詞面での評価が高いそうです。