110621(2)
数千年も生きていれば

雑踏から逃れ
耳を澄まして目を閉じ
そして心の感性を開く

束縛されていた鎖を断ち切り
心の襞にこびりついた怨念と
脳裏に刻まれた恥辱を洗い流し

さらには数千年前からの
羊飼いの言葉を
何度も何度も反芻してみる

やがて人は実感する
朝露のように清冽な冷気が
滴となって心の内壁に拡がることを

人間は誰もが詩人であり
音楽家でもある そして同時に
強欲に満ちた狂人でもある

しかし 情け容赦のない
強大な軍隊が あっという間に
大地を覆い尽くし 善人の悲鳴がかき消される

何を隠し持とうか 何を抱えて逃げようか
羊飼いの声と叡智こそが 
唯一の拠り所となるに違いない