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思い出の森の伝説

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 古代イスラエルの時代ですから、もうずいぶん昔のお話しです。今でこそ、樹齢を重ねたたくさんの木が生い茂る森になっていますが、当時その一帯は砂漠でした。昼はおそろしく暑く、夜は凍えそうなほど寒い気候でしたから、人はおろか動物も立ち入りませんでした。一本の草も生えていませんでした。

 でも、そんな所にしか住めない人がいたのです。

 かつては両親と子どもたちで、仲良く幸福に暮らしていたのですが、父親が戦争で死んでしまい、三人いた男の子の二人が相次いで伝染病で亡くなってしまいました。一番下の子は、生まれつき知恵が遅れていました。母親は、一人残った一番下の息子を抱え、生活のために毎日働いていたのですが、過労から病気になってしまいました。
 やがて住むところも追い出され、毛布一枚とわずかな食糧と薪だけを持って砂漠に逃れてきたのです。飢えと酷暑、そして凍える寒さの中で、母親はなんとか子どもを守ろうとしましたが、何も方法などなかったのです。
 動くこともつらくなった母親は、暖を取るために残しておいた木片に、毎日心からの願いを刻みました。「この子を守ってください」「この子を飢えから救ってください」「この子に飲み水を与えてください」・・・。
 とうとうわずかな食糧も底をつき、母親は息をしなくなりました。母親のそばには、動かなくなった母親を不思議そうに見つめる男の子と、文字が刻まれた十二の木片だけが残されました。

 毛布にくるまった男の子は、鳥のさえずりで目を覚ましました。不思議なことでした。遙か上空を舞うハゲタカを目にしたことはありましたが、小鳥など見たことがなかったからです。
 男の子は、さらに不思議な光景を目にしました。母親が横たわっていた場所に、いつの間にか木が生えていたからです。しかも、まるで樹齢数百年かと思えるほどの大木で、大きく拡げた枝には青々とした葉が密生し、照りつける暑い陽射しから男の子を守っていました。
 やがて、枝の上の方から何かが砂の上に落ちました。リンゴでした。男の子はすぐさま拾い上げ、口にしました。見上げていると、今度はひとかたまりの干しイチジクが落ちてきました。あるときは、朝露を蓄えた葉から水が流れ、のどを潤すことができました。夜になると、何本もの枝が地上低く下りてきて、たくさんの葉が男の子を寒さから守りました。
 
 母親の姿を追い求めていた男の子は何日か経って、文字が刻まれた十二本の木片が入った布袋を開けました。何が書いてあるか、理解することはできませんでした。
 男の子は、一本を手に取ると大木の北側に少しだけ歩き、砂に垂直に埋めました。何がそうさせたのかは分かりませんが、面白いと思ったのか、今度は南側に少し歩き、もう一本を同じように埋めました。そしてついには、大木を中心に円を描くように十二本の木片を埋め終わりました。

 朝が来ました。男の子は、いつもより騒々しい鳥のさえずりに起こされました。目を開いた男の子は、異様な光景を目にし、しばらく呆然としてしまいました。昨日、砂に埋めた木片が・・・大木とはいえないまでも・・・枝と葉を蓄えた若い樹木に生まれ変わっていたのです。すでにいろいろな種類の果実がたわわに実り、いたるところで朝露を飲むことができました。

 やがて、何人かの賢者が遠くからこの小さな森を目にし、男の子を訪ねてきました。何をどのようにして理解したのか分かりませんが、賢者たちは、砂漠を行き交う隊商たちに小さな森の話しを伝えました。隊商たちは行く先々の村で、この小さな森の話しをしました。
 ある日、生まれて間もない子どもの名前を刻んだ木片を持った母親が、男の子の小さな森にやってきました。そして賢者たちの勧めに従って、砂にその木片を埋めて帰りました。明くる日、半信半疑でやってきたその母親は、自分が埋めた木片が苗木のように、小さな枝を伴って育ち始めているのを目にしました。驚いた母親は、村に戻るとみんなにその話を伝えました。
 またある人は、年老いた両親の名前と感謝の言葉を刻んで、木片を砂に埋めました。同じように翌朝、その木片は苗木に変わっていました。
 このお話しは、噂話のようにあっという間にイスラエル中に広まりました。多くの人たちが、大切な人の名前と、その人への愛情や感謝のメッセージを木片に刻んで、男の子の小さな森を訪れるようになりました。木片はすべて苗木に変わり、成長を続けました。木々の根が地中深くの水分を呼び寄せたのか、いつしか青々とした水の湧くオアシスも生まれたのです。

 やがてイスラエルは、北と南に分裂して互いに戦うようになりましたが、この小さな森・・・いいえ、その頃にはもうすでに大きな森になってしまいましたが・・・そこだけは別でした。戦闘地域から外れたかのように、ここでは北の国の人々と南の国の人々は争いの気持ちを持たず、一緒に平和なひとときを過ごしました。
 何世紀にもわたって、小さな願いと感謝を込めた木片が埋め続けられ、大きな樹木に成長しました。
 やがて人々はこの森をいつしか「思い出の森」と呼ぶようになりました。

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 さて、長い説明になってしまいましたが、このときの賢者たちの血を引く子孫だという人の訪れを受けました。かつての砂漠のように、不安と恐れが広がっている今の時代に「思い出の森」を再現してほしいというのです。えっ?砂漠に森を?なんで?どうやって?
 ・・・必要な知恵を分かち、助け手を送るから「思い出の森」を、というと来訪者は去って行きました。

 これが「思い出の森」のあらましなんです。まさか実際に砂漠を探して植林するわけにもいきません。なので考えました。生来の不精者のわたしが考えそうなことだと笑われるかもしれませんが、ネット上に「思い出の森」を作ることにしました。「文字が刻まれた木片」を現代的に解釈し「グリーティングメモリー」としてお預かりし、森の管理人としてしっかり保管させていただきます。
 希望や願い、愛情や感謝、ねぎらいの気持ちを込めた「グリーティングメモリー」を、「思い出の森」に、そっと植林するお手伝いをさせていただきます。

        昼寝ネコ(賢者たちの代理人・そして「思い出の森」の管理人)

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